ポネット

無垢な少女が理解できずにいる問題

家族の愛を感じられる時にこそ、きちんとした恩返しをするべきだと、筆者は思っている。人にはいつか寿命ないし、命の終わりが訪れる。その時になってあぁしておけば良かった、こうしておけば良かった、そんな後悔を遺さないためにも出来ることはしておきたいと考えるのが普通だ。家族でもそう、子供が生まれれば必然と親は子供よりも先にこの世を去る。その時までに親に出来ることはしてあげたいと思うのが普通というもの、ですがその普通を実行することが出来ないまま、親と別れてしまうケースもある。

この映画は愛すべき母が突如としていなくなり、父を始めとした周囲の人間から母はもうこの世にいないと言われても理解することが出来ず、ただひたすらに待ち続けるという選択肢を選んだ少女の物語。『ポネット』と呼ばれるその映画は、幼く世界を知らない少女が突如として母親から切り離されてしまった物語。親子、母と子の愛が深く感じられ、そして父が娘に対する優しさと苦悩が満ちている作品となっています。

家族で観る映画

いつか帰ってくると信じて

主人公のポネットはまだ子供、それも世界の法則を知るはずもない無垢な少女だった。そのため、死んだ人間は二度と帰ってくることはないという現実を認識することが出来ず、ただただ母の帰りをずっと待ち続けるのです。そんなポネットに周囲の子供、彼女よりも幾分か上の子供達が死んだ人間はもう帰ってこないという現実を突き付けますが、それを信じることも出来ない。

ポネットの精神に負担をもたらさないためにも、父と叔母は最初こそ事実を隠蔽します。けれど時間が経つ中でいつまでも母を待ち続けているポネットに、現実を教えなければいけない瞬間が訪れます。そして打ち明けられた死んでしまい、もう帰ってこれないという真実をありのままに話した。けれど、それでもポネットは信じる事が出来なかったのです。いつかきっと、帰ってきてくれるとポネットは誰が何と言おうとそれを信じ続けたのだ。

これは恐らく、彼女自身が死が何を意味しているのか理解しておらず、帰ってくるかもしれないと曖昧な態度を示したことへの弊害と言えなくもなかった。何も知らないからこそ思える空想、いつか蘇って帰ってくるかもしれないと他人事のようにポネットへ安易な希望を植え付けてしまったことが原因でしょう。

そうしたことでポネットは母を忘れること無く、いつまでも待ち続けるという選択肢しか知らなかったため、いついかなる時でも家で母の帰りを待つようになってしまったのです。

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少女の願いが叶うとき

ポネットの心配をした父は寄宿学校に入学させることで、母親の事を忘れさせようとしました。ただそこでポネットは辛い出来事に遭遇してしまい、死にたいとまで思うようになってしまう。ドンドン深みにハマり、このままポネットの精神が破綻するかと思われた中で彼女の願いが叶う瞬間がやってくる。週末、父が迎えに来る前に1人母の墓地に訪れて、掘り返して起こそうとする最中で泣き崩れるポネット。そんな彼女を後ろから声をかけてきたのが他でもない彼女の母だった。

久しぶりの再会に喜ぶ二人、色々な事があって話をする母とポネット、やがて彼女は母に一緒にいてくれと嘆願する。けれどそれを死んでしまっているから出来ないとはっきりと告げた母。これにより、ポネットはこの瞬間を持ってもう母とは二度と会えないんだと、本来ならこうして邂逅することもないんだと、その事実を認識することが出来た。

やがて父が迎えに来る時間になり、彼女のあるべき場所へ帰るようにとポネットを促します。互いに愛していることを認識してポネットが走りだし、振り返った先にもう母がいなくなっていた。けれど彼女は後戻りすることなく、前進して父の元へと向かっていった。この時を持って、やっとポネットが前を向いて最愛の父と二人で生きていくという流れに落ち着いていきます。

切なく悲しい物語

幼い子供が突然の母との別れ、それは想像し難い苦しみだ。父と母、どちらもあって不可欠な存在ですが、何より子供は小さな頃より母との時間が一番長く作られます。だからこそ母を想う気持ちは父を大切にする想いより強くなるもの、ですがそうしたことも知らないまま、世界を知らないままに別れを経験すれば何を言われても理解できないのは当然だ。ポネットの行動は子供の行動としてとてもありふれた、恐らくどんな子供が取る行動と言えるでしょう。

時間が経つ中で知ることになる現実、挫けそうになりながらも母の愛情を確かに理解し、母はそんな愛娘には強く生きてもらいたい、辛く悲しい物語でも少女が初めて経験するには重すぎる傷から乗り越えるところで物語は終幕となる。

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